糖尿病とは

目次

糖尿病ってどんな病気?

「血糖が高くなる」「メタボの人に多い」「尿が甘くなる」「インスリンの注射が必要」
などの印象があると思います。
薬がなかった時代は、「尿から大量の糖がでて、やせ細りその後死に至る病気」と恐れられていました。1920年代に「インスリン」が発見されて治療ができるようになり、糖尿病を発症しても長生きできるようになりましたが、一方で、糖尿病による合併症で苦しむ人が増えてきました。

このインスリンというのは、膵臓で作られる血糖を下げる唯一のホルモンです。食事を食べた後に血糖値が上がりますが、インスリンが分泌されることで速やかに血糖値は元に戻ります。しかし、インスリンの分泌が不十分であったり、インスリンの効果が弱くなっていると、血糖値が下がらずに高血糖が引き起こされます。この高血糖が続くと糖尿病を発症します。

私たちは血液のなかにある糖(グルコース)をエネルギーにして、脳や筋肉、内臓を働かし、生命活動ができる仕組みになっています。インスリンは全身の細胞に糖を取り込ませたり、肝臓や筋肉で糖を貯蔵し、貯蔵した糖の分解を抑えるお手伝いをします。さらに、余った糖を脂肪として蓄えたりする働きをします。

糖尿病の診断基準

インスリンの分泌には、生命維持のために必要なエネルギーとの釣り合いをとって一日中少し出ている「基礎分泌のインスリン」と、食事の後などに血糖値を上げ過ぎないようにたくさんでる「追加分泌のインスリン」の2種類があります。インスリンの「基礎分泌」が障害されると肝臓からの糖放出が抑えられずに空腹時の血糖値が上昇します。一方で、インスリンの「追加分泌」が障害されると食後の血糖値が上昇します。

糖尿病の診断には、空腹時、随時(食事と採血の時間は問わない)、75gOGTT(ブドウ糖負荷)後2時間後の血糖値 と HbA1c(血中の糖化ヘモグロビン)の測定が必要になります。

検査結果で、「糖尿病」「糖尿病型」「糖尿病の疑い」に区別されます。

糖尿病の種類

1型糖尿病

1型糖尿病は、膵臓に障害がありインスリンを作ることができないため発症します。

2型糖尿病

2型糖尿病は、主に生活習慣病や肥満、加齢などが原因でインスリンの分泌が少なくなったり、インスリンの効き目が弱くなることによって発症します。糖尿病の90%以上は2型糖尿病です。

糖尿病の症状

2型糖尿病の初期は無症状の場合が多く、ゆっくり症状があらわれます。

糖尿病の合併症

血糖値が高い状態が続くと、血液がドロドロになったり、血管にダメージを与えたりします。つまり、糖尿病は時間をかけて「血管をボロボロ」にする病気です。細胞の一つひとつに酸素や栄養を運ぶため、「血管」は体中に張りめぐらされています。すなわち、糖尿病の治療が十分でないと、知らないうちに、全身にさまざまな「合併症」が起きてきます。

特に細い血管が傷つけられて生じる細小血管レベルの糖尿病合併症には、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症があります。
「しんけい」、「め」、「じんぞう」の頭文字をとって、「しめじ」と呼ばれます。

大血管レベルの糖尿病合併症には、足壊疽、脳梗塞、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)があります。

「えそ」、「のうこうそく」、「きょけつせいしんしっかん」の頭文字をとって、「えのき」と呼ばれます。

糖尿病の治療

食事療法と運動療法は2型糖尿病の治療における治療の根幹です。

食事療法

2型糖尿病の食事療法は、エネルギー摂取量を最適化して
・インスリン分泌不全の状態を補う
・肥満の解消
・高血糖以外の生活習慣の病態の是正
を行うことを目的としています。

総エネルギー摂取量は、目標とする体重や日常の活動量によって設定されます。
総エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(㎏)×エネルギー係数(kcal/kg)

目標体重
65歳未満:[身長(m)]2×22
65歳から74歳:[身長(m)]2×22~25
75歳以上:[身長(m)]2×22~25

身体活動レベルとエネルギー係数
①軽い労作(大部分が座位の静的活動):25~30
②普通の労作(座位中心だが通勤・家事,軽い運動を含む):30~35
③重い労作(力仕事,活発な運動習慣がある):35~

総エネルギー摂取量は、目標とする体重や日常の活動量によって設定されますが、これ以外にも合併症の程度、脂肪や筋肉のバランス(体組成)などを踏まえた柔軟な目標にする必要があります。筋肉はエネルギーを消費して体の中で熱を作っています。つまり、体脂肪率が高く、筋肉量が少ない人は基礎代謝が低下しているため、想定よりもエネルギー消費量は少ないかもしれません。加えて重要なのは、筋肉量を増やして基礎代謝がアップすれば、エネルギーを消費しやすくなるということです。そのため、食事療法と運動療法はセットで考えていく必要があります。

エネルギー栄養素の比率は、一般的に炭水化物50~65%、タンパク質13~20%、脂肪20~30%が基準とされています。
2型糖尿病の食事療法のエネルギー栄養素の比率に明確な設定がないのも、糖尿病以外に慢性腎臓病や動脈硬化症、肥満症などの合併があるからです。慢性腎臓病ではタンパク質の摂取制限が必要になるケースがあったり、動脈硬化症や肥満症では炭水化物と脂質の摂取制限が必要になるなど、それぞれの病気に関する学会から推奨される基準があります。すべての推奨を満たす最大公約数の食事制限をするのは困難です。
エネルギー栄養素の比率は、必要最低限のエネルギー量の確保を前提に、個人の好みや地域の食文化などの食習慣を配慮し、「バランス」に心がけていく必要があります。また、「制限」だけではなく、不足している栄養素を「補う」形にも目を向けるべきです。医師や栄養士さんと相談して適切な食事療法ができるようにしましょう。

運動療法

糖尿病診療ガイドライン2019

運動療法を開始する前に、網膜症、腎症、神経障害などの合併症や、整形外科的疾患などを含む身体状態を把握し、運動制限の必要性を検討が必要です。

心血管疾患のスクリーニングに関しては、一般的には無症状、かつ、行う運動が軽度~中強度の運動(速歩など日常生活活動の範囲内)であれば必要ないが、普段よりも高強度の運動を行う場合や、心血管疾患リスクの高い患者では、スクリーニングと、必要に応じて運動負荷試験などを考慮する必要があります。

1型糖尿病患者においても単回の適切な運動による血糖値は低下しますが、長期的な血糖コントロールへの運動の効果については一定の見解は得られておりません。

メディカルチェックについて(リンク)

運動療法について(リンク)

薬物療法

糖尿病の薬物治療の方針は、1型糖尿病と2型糖尿病、病態、年齢、合併症などによって異なります。
1型糖尿病は、インスリンが作ることができない病態のため、インスリンを補充するインスリン療法が必須となります。
2型糖尿病の治療の基本は食事・運動療法ですが、十分な食事・運動療法を行っても血糖コントロールが得られない場合、経口血糖降下薬やGLP1受容体作動薬などの薬物治療が必要になります。
インスリンの分泌を促進させる「スルホニルウレア薬」「グリニド薬」「DPP-4阻害薬」「GLP-1受容体作動薬」「グリミン系」、インスリンの効きやすくする「ビグアナイド薬」「チアゾリジン薬」「グリミン薬」、糖の吸収をゆっくりにする「α-グルコシダーゼ阻害薬」、尿に糖を出すことで血糖を下げる「SGLT2阻害薬」などがあり、各個人の病態に合わせて調整していきます。インスリン療法が適応となる方もいます。

糖尿病の治療目標

糖尿病治療の目標は、血糖はもちろん、血圧、体重、血清コレステロール値などを良好にコントロールをすることによって、合併症の発症や進行を阻止し、糖尿病のない人と変わらない日常生活を送れるようにしたり、 健康な寿命を確保することです。

(参考)糖尿病診療ガイドライン2019

高齢者糖尿病の注意点

65歳以上の糖尿病を高齢者糖尿病といいますが、特に75歳以上の糖尿病患者さんでは、心不全、脳卒中、低血糖のリスクが増加します。膵臓にあるβ細胞からインスリン分泌能が低下したり、活動低下によって筋肉のインスリン抵抗性の増加、サルコペニア肥満といった状況に陥りやすいです。高齢者糖尿病患者さんは、日常生活の活動量に配慮して治療方針を立てていく必要があります。

(参考)高齢者糖尿病診療ガイドライン2023.p 94,南江堂,2023

サルコペニア肥満とは

サルコペニア肥満とは高齢者の主な肥満の形態です。「サルコペニア」とは筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態を示します。つまり、サルコペニア肥満は筋肉量低下と肥満が結びついて、さらにインスリン抵抗性、炎症、酸化ストレスを生み出してしまう状態といえます。

シックデイとは

糖尿病の方が、風邪をひいたり胃腸炎になったりなど体調が著しく悪くなったときを「シックデイ」(sick day)といいます。
発熱、咽頭痛、咳、嘔気、下痢などの体調の変化は体にとってストレスになります。体の中では、ストレスホルモンが分泌され、体の異常事態に備えようとします。しかし、ストレスホルモンは血糖を上げる作用があり、さらにシックデイでは体の中でインスリンの働きが悪くなっているので、普段よりも大人しく生活していたとしても血糖値が高くなることがあります。逆に、体調が悪くて食欲が低下して実際に食べれないときにインスリン注射や血糖を下げる薬をいつも通り投与すると低血糖を起こす可能性があります。そのため、インスリンの注射や血糖値を下げる飲み薬の調整が必要になることがあります。

困った際は自己判断せずに病院受診するようにしてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次